台湾中南部で、新鮮で豊富な
速鐡路(台湾新幹線)は、鉄道ではあるが、いわゆる鉄道の旅を実現してくれるものではない。昨今、隠れた人気の“鉄道の旅”は、標高4,000m以上の高地を走る青海西蔵鉄道や壮大なアルプスを臨むスイス氷河特急など、車中での滞在を楽しみ、車窓からのパノラマに感動するといった目的地へたどり着くことよりもそこまでの時間を楽しむことを目的とするが、台湾新幹線はそうではないからだ。
普通の鉄道の旅は、できるだけ長く車中にとどまることが幸せだ。線路と車輪が刻む一定のリズムを楽しみながらつらつらと一晩を明かしたいくらいの勢いであるが、一方の台湾新幹線といえば最も長い区間で345キロ、最短時間の場合はわずか83分でその旅を終えなくてはならない。よって、わが国が誇る技術を輸出して完成した、国内の新幹線を超える快適さをすべて体験するのはむずかしい。座席は全席指定で、全車禁煙。前の座席を倒されても不快に感じない104センチのシートピッチ。座席幅は53.6センチとこれまた広く、隣の他人を気にする必要もなし。窓は大きくて明るく、走行中をはじめ発車・停車時の揺れもほとんどなく、防音設備で通路越しの会話も問題なし。ビジネス車両の座席にはすべて110Vの電源が装備され、無線LAN対応のパソコンが使え、航空機材のような音楽システムも完備…。とまあ、優れた点は限りなくあって、台湾南部への車窓を楽しむか、設備を体感するかは人によって分かれるところだが、とにかく時間は少ない。あまりよくばらず、後々を考えるに、体力は温存すべきかもしれない。
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